全日本空輸株式会社
JALを抜いて,日本の航空業界のリーディングカンパニーとして君臨しています.
就職先としてありなのかなしなのか見ていきましょう!
ANAとは?
創業:1952年
売上高:1兆9717億円
従業員数:41930人(連結)
本社:東京都
勤務地
基本的に空港勤務になります.
総合職は羽田空港勤務の可能性が極めて高いです.
事業情報
以下のグラフは特記していない限り「統合報告書 2018」より引用しています.
ANAの売上高・営業利益推移は以下のようになっています.
ほぼ年々増収増益を成し遂げていますね.営業赤字に陥ったのはリーマンショック後の2010年のみです.それ以外は営業黒字を続けています.2010年の売上高は1兆2283億円であったことを考えればとても順調に成長してきていることが分かります.ただし,営業利益率に関しては,JALが10%超で推移しており,それに比べれば劣っています.これはJALが一度経営破綻した経緯もあって利益偏重となっているためだと考えられます.
ANAは下記のような事業を取り扱っており,その事業構成比は以下のようになっています.
- 航空事業
全体の73.5%を占めています.ANAの中核事業です.
- 航空事業(国際線)
2017年度に売上高が5974億円を達成しています.表は2014年を100とした時の値であり,国際線の事業規模が拡大傾向にあることが示されています.これは訪日外国人が年々増加していることが主要因とされています.下の表が訪日外国人数と出国日本人数の推移になっています.出国日本人数は頭打ちとなり横ばいが続いていますが,訪日外国人数が急速に増加している様子が見て取れます.
訪日外国人は政府計画で2020年に4000万人とされており,今後も旺盛な市場規模の旺盛な拡大が期待されています.この訪日外国人の構成比は以下のようになっています.
ほとんどがアジア圏であることが分かります.ここの需要をいかに取り込むことができるかで成長度合いが変わってきます.2018年6月にバンコクを増便,バンコク・クアラルンプールに中型機を新たに投入するなどの施策がすでに打たれていますね.
- 航空事業(国内線)
2017年度に売上高が6897億円を達成しています.まだ国際線事業より大きいですね.元々国内線を得意としていたANAです(JALが国際線,ANAが国内線を担当するように国から決められていた時期があった)ので,国内線は盤石です.しかし,傾向としては横ばいがつづいています.今後は,日本の人口減少の効果と訪日外国人増加による国内移動の効果が相殺しあって,およそ横ばい成長していくと見込まれています.よって,あとは如何に効率的な運営を行っていくかに焦点が当てられています.
- 航空事業(貨物郵便事業)
売上高としては横ばいな状況です.今後は半導体の運搬需要が激増すると見込まれており,今後は増加傾向になる見通しです.
- 航空事業(LCC事業)
売上高は年々増加しています.2017年度は875億円を記録し,2018年度に1000億円を達成する見込みです.ANAが運営するLCCはバニラエア(100%子会社)とピーチ(77.9%の連結子会社)になります.なお,2019年にはバニラエアとピーチは統合して一つの会社になる予定です.現在,LCCの占めるシェアは今や国内線で9.7%,国際線で18.9%を記録しています.
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その成長率も著しく,もはやローコストだからといって無視できる規模ではなくなってきました.そんなLCC市場の中,ピーチとバニラエアを統合した場合,ANAはLCC市場でトップに躍り出ます.
今後も拡大を続ける見通しのLCC市場で,これだけのシェアを有してれば十分に成長できる余地があります.
- 航空関連事業
全体の12.1%を占めています.航空事業をサポートするために空港地上支援,航空機整備,車両整備,貨物・物流,ケータリング,コンタクトセンターなどを取り扱っています.訪日需要による外国航空会社の事業を請け負うことによって,年々売上を拡大させています.
- 旅行事業
全体の6.7%を占めています.航空券を販売する航空セールス事業と旅行商品の企画・販売を行う旅行事業を取り扱っています.ほぼ横ばいの成長となっています.
- 商社事業
全体の6.1%を占めています.航空機部品の調達,航空機の輸出入・リース・売却・機内サービス・販売用物品の企画・調達などを取り扱っています.売上高は上昇基調にあります.
ANAの強み
- LCCに強み
上記しましたが,ANAが運営するLCCはバニラエア(100%子会社)とピーチ(77.9%の連結子会社)であり,統合すれば日本のLCC市場のトップとなります.バニラエアは首都圏,ピーチは関西圏を担当していたことから,今後は一つの会社で全国をカバーし,Jetstar japan(JAL 33.3%出資)と本格的な競争を繰り広げることになります.
- 規模が大きい(日本1位,世界14位)
総輸送旅客数は日本で1位,世界で14位となっています.ただし,世界の旅客市場は北米,アジア圏,欧州でほぼ3分割されている状況であり,欧州・北米に遠い日本の航空会社はどうあがいても世界10位程度が限界だと思われます.目指すべきところはアジアNo.1か中国の航空会社に次ぐポジションでしょう.
- SKYTRAX社から5スター授与
SKYTRAX社が運営する「5スター」を6年連続で獲得しています.高いサービス力が伺えます.
ANAの弱み
あまり無いような気がします.強いてあげれば以下ですかね.
- リース機が多い
現在ANAの保有機は206機所有,51機リースです.一方で,JALは205機所有,26機リースです.所有台数は殆ど同じで,リース機だけ差があります(ANAの方が多いのは売上から見て自然です).このリース差は主に中型機と大型機から来ています.正直,リースは最新機への交換が容易,バランスシートへの影響が少なく投資家に好まれる,などの利点があり,顧客面から見れば強みと言ってよいです.しかし,営業利益を出す上では,リースに毎年お金を支払うことになるため,営業利益率が高くなりません.おそらくこのリース差が結構ANAとJALの営業利益率の差につながっていると予想.
ANAの今後
今後の施策
- 2019年内にバニラ・エアとピーチを統合する.
- LCCでの中距離路線の実施.
- 就航都市の拡大(アフリカ・南米を目指す)
- フリート戦略の実施(機材小型化による需給適合)
- リゾート戦略の展開
などを行っていくようです.
キーポイント
- 2019年内にバニラ・エアとピーチを統合する.
今後もLCC市場は拡大を続けていく見通しで,成長していくためにはLCCでシェアを取っていくことは必要不可欠です.ANAはLCCで中距離路線の就航も発表しています.今後の動向に注視していくべきです.
ANAは就職先としてあり?なし?
- 勤務地
基本的に空港勤務になります.
総合職は羽田空港勤務の可能性が極めて高いです.
- 将来性
JALが経営破綻でもたついている間に大差をつけることができたので,日本No.1の座はほぼ維持できるでしょう.戦略的にみてもあまり無理がなく,また弱みもほとんどないので,これからも市場規模の拡大に伴って安定的に成長していくと思われます.ただアジアNo.1を目指すと書いてあるものの,中国の航空会社に勝てる気はしない.
- 年収
761万円.JALより低いですね.
- その他
理系の総合職は初め3年~5年は現場で整備を担当するようです.院卒の場合30間近になってしまうので,もう入ってしまうと他への転職は難しいのではと予想.覚悟を決めていきましょう.
JALと比較する形で書けば,
アジアNo.1を目指し,積極的に規模を追い求めたい方にはありかと思います.
将来性は問題ありませんので,JALとの二択になる方が多いと思います.一言で違いを言えば,ANAは規模,JALはサービス力です(現在のサービス力は同じかもしれませんが方針としてJALはサービスを掲げている).ANAは世界中にネットワークを張り巡らせ,より多くの人を世界中へ運びたい,と考えるかたにお勧めです.
以上ご参考になれば.
他の企業はこちらから.
www.atoq.tokyo
*1:国土交通省 「我が国のLCC旅客数の推移」より