アサヒグループホールディングス株式会社
日本の中でビール生産量トップを走る総合飲料メーカー.
酒離れが叫ばれているなか,実態はどうなっているのでしょうか.
就職先としてありなのかなしなのか見ていきましょう!
アサヒとは?
創業:1949年
売上高:2兆0848億円
従業員数:23,619人(連結)
本社:東京都墨田区
勤務地
基本的に全国各地になります.
特に理系のエンジニアリング職は,全国の施設で5年程度でローテーションがあり,全国転勤ありです.
これからは海外のプラント立ち上げや保守もあるでしょうから,海外転勤も頻繁に起こると予想されます.
事業情報
以下のグラフは特記していない限り「アニュアルレポート 2017」より引用しています.
(エクセルは資料に基づき作製したオリジナルです.)
アサヒの売上・営業利益推移は以下のようになっています.
(2015年で日本会計基準から国際会計基準に変更されたので2つ表示しています.)
売上高は増加傾向にあります.酒類事業は横ばいですが,飲料事業やその他の事業及び海外事業が成長を牽引しています.2017年に4000億円程度急増している要因は,ビール大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブからチェコ,ポーランド,ハンガリー,ルーマニアのビール事業を8883億円で買収したためです.ブランドとしては,「Peroni」「Groisch」「Peroni Nastro Azzurro」「Kozel」「Tyskie」などです.海外旅行経験者であれば飲んだことがあるかもしれませんね.本気で海外事業への挑戦を始めたことが伺えます.
また,営業利益も増加傾向にあります.営業利益率も増加傾向にあり,この度高利益体質を有する海外事業を買収したことによって,営業利益率が10%に迫る水準となってきました.今後は買収した海外事業とシナジーを発揮し,更なる高利益体質となれるかが焦点となりそうです.
アサヒは以下のような事業を行っており,その売上構成比は以下のようになっています.
酒類事業が最も大きいですが,国際事業が28.4%もあります.買収という形ではありますが,海外展開が進んでいる結果と言えます.
各事業詳細
酒類事業
酒類を取り扱っています.「アサヒビール株式会社」がこれにあたります.具体的には,「アサヒスーパードライ」(ビール),「アサヒスタイルフリー(生)」(発泡酒),「クリアアサヒ」(新ジャンル),「もぎたて」(RTD),「Alpaca」(ワイン)を主要ブランドとして取り扱っています.
酒類業界全体についての詳細については下記を参照してください.
https://www.atoq.tokyo/entry/drink-kongo
概説すれば,国内における酒類販売は減少傾向にあり,内訳としてはビール,発泡酒,新ジャンルが減少,RTDのみ増加となっています.したがって,市場の将来性自体は良いとは言えません.また,新たな動向として酒税法が改正され,ビール,発泡酒,新ジャンルの税率が2026年に統一されます.結果として現状との比較でビール→減税,発泡酒・新ジャンル→増税となり,酒類販売業者は利益率の高いビール回帰を見込んでいます.
アサヒの酒類事業の売上高推移は以下のようになっています.
(2016年以降は国際会計基準です.以下のグラフも同様)
売上高,営業利益率ともに横ばいとなっています.売上高は酒類業界全体の傾向と同様であり,全体の流れに乗っていると言えます.また,ビールといえば,あの銀色の缶が思い浮かぶ人が多いように非常に強力なブランド力を有しています.アサヒビールはそのブランド力を活かして業界中トップの営業利益率をたたき出しています.
また,実際にそのシェアも非常に高いものとなっており,ビール類39.1%,ビール48.8%,新ジャンル30.0%とすべてシェア1位を占めています.カテゴリー別の売上収益構成比は以下のようになっています.
ビール類が75%以上を占めており,その他のジャンルではあまり強くないことが伺えます.ビール類傾倒の構図となっています.
どうあがていも売上高が激増することはないので,如何に営業利益率を高めていくかに焦点が当てられています.
飲料事業
清涼飲料を取り扱っています.「アサヒ飲料株式会社」「カルピス株式会社」がこれにあたります.具体的には,「三ツ矢サイダー」「ウィルキンソン」(炭酸飲料),「カルピス」(乳性飲料),「ワンダ」(コーヒー飲料),「十六茶」(お茶飲料),「アサヒ おいしい水」(ミネラルウォーター)を主要ブランドとしています.
飲料事業の売上高,営業利益率推移は以下のようになっています.
売上高は横ばい,営業利益率は増加傾向になっています.業界全体としては,微増か頭打ちですので,流れに沿ったものとなっています.近年は高付加価値化によって高い営業利益率へと変貌を遂げています.
国内の清涼飲料市場においては,シェア13.5%第3位に付けています.また,カテゴリー別販売数量構成比は以下のようになっています.
炭酸飲料,コーヒー飲料,乳性飲料,お茶飲料に満遍なく分散していることが分かります.特に炭酸飲料(三ツ矢サイダー)の事業貢献度が大きいです.透明炭酸飲料では販売数量No.1となっています(炭酸飲料全体ではコーラが一位です).
食品事業
タブレット菓子やサプリメント,ベビーフード,フリーズドライ等の食品を取り扱っています.「アサヒグループ食品株式会社」がこれにあたります.具体的には,「ミンティア」(タブレット菓子),「The うまみ」(フリーズドライ食品),「はいはい」「栄養マルシェ」(ベビーフード),「エビオス錠」「ディアナチュラ」(ヘルスケア分野)などを主要ブランドとしています.
食品事業の売上高,営業利益率推移は以下のようになっています.
売上高,営業利益率ともに微増傾向にあります.ただし,売上高はアサヒグループホールディングスの中で10%程度しか占めておらず,あくまで補助的な役割を果たしています.近年はフリーズドライや健康機能食品などの高付加価値商品によって営業利益率を伸ばしています.
事業別売上収益構成比は以下のようになっています.
各事業に分散していることが分かります.特に強みとして有するのは,ミンティアがタブレット菓子シェア1位57%を占めており,ベビーフード市場においてもシェア1位52.6%を占有しています.また,ディアナチュラブランドも年々成長を続けており,シリーズサプリメント市場シェアで18.6%を有しています.
国際事業
国外での酒類・飲料事業を手掛けています.具体的には,「asahi」「PERONI」「Filsner Urquell」「Schweppes」などを主要ブランドとしています.
国際事業の売上高,営業利益率推移は以下のようになっています.
買収を繰り返しているため,売上は増加傾向にあります.特に,2017年にビール大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブからチェコ,ポーランド,ハンガリー,ルーマニアのビール事業を8883億円で買収という過去最大の投資を行ったため売上は爆増しています.その事業の営業利益率が高かったことから,いままで赤字を行き来していた国際事業が黒字で安定しようとしています.過去最大の買収案件であり,失敗が許されない状況ではあります.
地域ごとの売上比率は以下のようになっています.
欧州での買収が多かったことから,欧州事業が過半を占めていますね.基本的に買収による事業展開ではありますが,買収企業の販売網を活かして「アサヒスーパードライ」の販売を進めています.年々アサヒスーパードライの売り上げは増加しています.
アサヒの強み・弱み
アサヒの強み
- ビール類,ビールのみのどちらにおいてもトップシェア
ビール類39.1%,ビール48.8%,新ジャンル30.0%とすべてシェア1位です.圧倒的なブランド力と販売網を有していることが伺えます.
- 清涼飲料水市場シェア13.5%第3位
複数のブランドによる清涼飲料事業展開により,第3位につけています.特に三ツ矢サイダーが大きな割合を占めています.
- 食品事業の一部に特化した強み
タブレット菓子やサプリメント,ベビーフードなど強みのある事業を有しています.
- 海外売上比率が高い
海外売上比率は30.7%に達しており,飲料メーカーとしては高い値を示しています.
アサヒの弱み
- 酒類事業においてビール類以外が弱い
思い浮かべればわかりますが,RTDカテゴリにおいてはアサヒの存在感は高くありません.チューハイで言えば,「氷結」や「ほろよい」,「strong」が強いですが,すべて他社製品です.ビール類離れが進む中,このままでは売上を維持していくことは難しいでしょう
- 飲料事業において,お茶飲料の存在感が薄い
展開するお茶ブランドは「十六茶」になりますが,あまり売れていません.国内飲料市場規模ではお茶がトップシェアを誇りますが,「十六茶ブランド」は「おーいお茶」「伊右衛門」「綾鷹」「生茶」の後塵を拝しています.ここでのブランド地位を確立できない限り,これ以上国内飲料市場シェアが高まることはない
- 国際展開が買収頼み
国際展開が買収頼みであり,シナジーを生み出す形で経営を行っていけるかが焦点となっています.
アサヒの今後
中期経営計画から見る今後の施策
酒類事業
- 「アサヒ グランマイルド」「アサヒスーパードライ 瞬冷辛口」などのビール新価値創造
- 「クリアアサヒ」のリニューアル
- 「アサヒもぎたて」「アサヒ贅沢搾り」リニューアルによるRTD強化
飲料事業
- 重点ブランド「三ツ矢サイダー」「ワンダ」「カルピス」の派生商品による価値向上
- 健康飲料のラインナップ拡充
- ウィルキンソンの広告拡大
食品事業
- 不採算事業からの撤退による選択と集中
- 「ミンティア」「ディアナチュラ」「ベビーフード」「フリーズドライ」の主要ブランドへの積極投資
国際事業
- 「アサヒスーパードライ」ブランドの強化
- 買収企業とのシナジー発揮
などを行っていくようです.
キーポイント
- 「アサヒもぎたて」「アサヒ贅沢搾り」リニューアルによるRTD強化
まずは国内で絶対的な酒類No.1企業の地位を築くべきでしょう.そのためには弱点のRTD事業強化が必要不可欠です.逆に成功しない場合は,ビール類の売上が徐々に落ち込んでいくと考えられるので,酒類No.1からは脱落します.
アサヒは就職先としてあり?なし?
- 勤務地
基本的に全国各地になります.
特に理系のエンジニアリング職は,全国の施設で5年程度でローテーションがあり,全国転勤ありです.
これからは海外のプラント立ち上げや保守もあるでしょうから,海外転勤も頻繁に起こると予想されます.
- 将来性
将来性は高いと言えます.ビール類は縮小傾向にあるといっても,その売上規模はすさまじくここでトップシェアを築いている安定性は高いです.潰れることはまずないでしょうね.成長性という意味での将来性で言えば,不透明感が強いです.巨額の買収案件で欧州事業の手に入れましたが,シナジーを発揮し効率的な経営を行っていけるかはこれからにかかっています.
- 年収
30歳で800万とか
- その他
家賃補助が7割も出ます!
アサヒブランドが好きな方,欧州における酒類・飲料事業に携わりたい方にはありかと思います.
総合飲料メーカーの中で最も欧州事業の割合が大きいため,将来的にこの分野に携わりたい方はアサヒを選択すべきだと思います.また,アサヒはどうしてもビール傾倒の経営をしていますので,ビールが好きだという方が行くべきでしょうね.
以上,ご参考になれば.
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