飲料業界全体について書きます.
各社の「統合報告書」及び「FACT BOOK」よりグラフを引用しています.
(エクセルは資料に基づき作成したオリジナルです)
酒類事業
カテゴリ分類について
ビール類(ビール,発泡酒,新ジャンル)などの定義は以下のように酒税法により規定されています.
ビール:麦芽比率50%以上かつ指定副原料を用いたもの.
発泡酒:麦芽比率50%未満
新ジャンル:麦芽を使用しない,または,発泡酒に麦スピリッツを加えた酒類.
なお,2023年から発泡酒の定義が拡大され,新ジャンルを含むようになります.
また,RTDというものがありますが,明確な定義はなく,専ら以下のような使われ方をしています.
RTD:缶チューハイや缶カクテルなどの低アルコール飲料
酒税法の改正について
(アサヒグループホールディングス 「factbook 2017」より)
酒税法が順次改正され,
ビール:減税
発泡酒・新ジャンル:増税
となっています.
これを受けて,総合飲料メーカー各社はビール回帰路線と取っています.というのも,ビールの廉価版ということで発泡酒や新ジャンルの多くが人気を博していましたが,酒税が統一され値段差がなくなれば,消費者がビールに回帰すると見込んでいるからです.また,ビールの市場規模が大きく,企業にとってもビールのほうが量産効果を狙えて利益を上げやすいという利点もあります.
よって,新ジャンルに限っては消費者の趣向の広がりに対応して販売を続けていくと考えられるが,(現在の定義の)発泡酒はその存在意義がなくなり,販売量を減らしていくでしょう.
酒類の市場規模
(アサヒグループホールディングス 「factbook 2017」より)
ビール類の市場は減少傾向にあります.ビール離れが叫ばれて久しいですが,如実に影響が出ていますね.RTDやワインなどその他のジャンルへ流れた影響も少なからずあります.ビールが発泡酒・新ジャンルに徐々にシェアを奪われて行っていることが分かります.
しかし,中でも特筆すべきは,ビール,発泡酒,新ジャンルすべてがすでに減少傾向に入っていることです.今後はさらに人口減少に伴って需要が減少することが見込まれており,ビール類の将来は明るくありません.
一方で,ビール類以外の市場規模は次のようになっています.
ビール類以外の市場規模は増加傾向にあります.中でもRTDの伸びがすさまじく,ビール類からRTDへ消費者の趣向が移動していることが分かります.しばらくこの傾向は続くと考えられ,総合飲料メーカー各社はRTDでブランド力のある商品を出すことに力を注いでいます.
各社のビール類市場シェア
(アサヒグループホールディングス 「factbook 2017」より)
A社がキリン,B社がサッポロ,C社がサントリーになります.よって,シェア順位は以下のようになります.
1位:アサヒ(39.1%)
2位:キリン(31.8%)
3位:サントリー(16.0%)
4位:サッポロ(12.1%)
シェア1位はアサヒとなりました.アサヒは一時期かなりシェアを落としており,このままでは経営危機に陥ると言われていましたが,「アサヒスーパードライ」を開発し復活を遂げました.
一方で,キリンは60%超もあったシェアが次々と奪われて行き,凋落の一途を辿っています.そこには発泡酒や新ジャンルなどで消費者の需要を捉えた商品を開発することができなかった商品開発力の低さという本質的な問題があります.
サッポロもキリンと同様で,サッポロ黒ラベルに頼りきり,新商品の開発を怠った結果,シェアを落とし続けています.近年は下げ止まっていますが,今後がどうなっていくかは不透明感が漂っています.
サントリーは新参ではありますが,シェアを確実に伸ばしてきています.「PREMIUM MALTS」など,清涼飲料業界で培ったブランド開発力を活かしています.
各社のRTD市場シェア
グラフを見たい方は以下の7pを参照してください.
https://www.smbc.co.jp/hojin/report/investigationlecture/resources/pdf/3_00_CRSDReport065.pdf
1位:サントリー(39%)
2位:キリン(28%)
3位:アサヒ(13%)
となっています.成長著しいRTD市場を制しているのはサントリーとキリンです.サントリーは「STRONG ZERO」「ほろよい」,キリンは「氷結」を有しており,正にRTDを代表するブランドによって市場を席捲しています.
飲料(清涼飲料水)事業
飲料(清涼飲料水)事業の市場規模
(キリン 「DATA BOOK 2018」より)
飲料(清涼飲料水)事業の市場規模は増加傾向あるいは頭打ち気味になりつつあります.カテゴリー別で言えば,茶系がトップで30%あり,次点で炭酸,コーヒー,ミネラルウォーターが15%程度となっています.
今後としては,炭酸飲料がターゲット層である若年層の規模低下に伴って減少傾向となる一方で,その分コーヒー・茶系が増加傾向を維持すると考えられます.ただし,いずれにしても,10年後までには全てのカテゴリーが減少傾向になることは間違いないでしょう.
各社のシェア
各社のシェアは以下のようになっています.
1位:日本コカ・コーラ(23%前後)(売上高8500億円.アサヒ飲料の売上高から類推)
2位:サントリー(20.8%)(ホームページより)
3位:アサヒ(13.5%)(FACTBOOKより)
4位:キリン(10%前後)(売上高2800億円.アサヒ飲料の売上高からの類推)
コカ・コーラが思ったよりも強いですね.実は「綾鷹」とか「爽健美茶」「アクエリアス」「いろはす」「ジョージア」はコカ・コーラの商品になります.サントリーが近年急速に成長しており,コカ・コーラを追い抜こうとしています.
まとめ
どうでしたか?だいたいの飲料業界の市場感がつかめたと思います.
将来的には縮小することは間違いないものの,急速に減少していくことはなく,人口動向から需要が把握しやすいので,生産調整をしっかりできれば赤字になることはないと思われます.