富士ゼロックス株式会社
斜陽産業である複合機大手の富士ゼロックス.経営の多角化は進んでいるのか
就職先としてありなのかなしなのか見ていきましょう!
富士ゼロックスとは?
創業:1962年
売上高:1兆478億円
従業員数:44,596人
本社:東京都港区
勤務地
事務系→全国各地
技術系→神奈川県海老名,横浜
研究開発・生産拠点が集中していますので,技術系人材にとっては勤務地を神奈川県に限定でき,魅力的だと思います.
事業情報
以下のグラフは特記していない限り「アニュアルレポート 2018」より引用しています.
(エクセルは資料に基づき作製したオリジナルです.)
富士ゼロックスの売上高推移は以下のようになっています.
売上高は,2008年までは順調に成長していましたが,リーマンショックをきっかけに2009年に大きく売上を落としています.それ以降は何とか盛り返してきたものの,2014年にピークアウトし,再び減少に転じています.この売上推移は複合機の市場規模の推移と類似しています.
このように複合機の市場規模と強い相関があることが分かります.市場予測では環境意識の高まり,デジタル化の進行によって,このまま複合機の市場規模は縮小していく見込みですので,富士ゼロックスの売上規模は漸次的に減少していくもの思われます.
また,営業利益の推移は以下のようになっています.
基本的に横ばいで推移していましたが,2017年度は構造改革の一時費用の計上によって大幅な減益となっています.記憶に新しい人も多いと思いますが,富士ゼロックスは国内外において1万人の人員削減を行うと発表しました.なお,普段の営業利益率は8%前後であり,メーカー平均が5%程度であることを踏まえれば,平均より少し高い程度だと言えます.
富士ゼロックスの海外売上比率は47%であり,アジア・パシフィック地域を担当しています.米州や欧州に関しては米ゼロックスコーポレーションの担当領域となっています.
富士ゼロックスは3セグメント体制を取っており,オフィスプロダクト&プリンター事業,ソリューションサービス事業,プロダクションサービス事業となっています.その売上構成比は以下のようになっています.
やはり実際に複合機や消耗品の販売を行うオフィスプロダクト&プリンター事業が過半を占めています.
オフィスプロダクト&プリンター事業
複合機やプリンタ等のオフィス機器とその周辺サービス(クラウドなど)を取り扱っています.オフィスプロダクト&プリンター事業の売上高推移は以下のようになっています.
富士ゼロックスの中核事業ですので,全体の売上と同様の推移をしています.これはすなわち,複合機の市場規模に相関しているということです.2014年度においてピークアウトしていますね.
今後もデジタル化の浸透によってこの事業は縮小していくことは間違いありません.富士ゼロックス自身もこういった予測を行ったことから,1万人という超大型の人員削減に乗り出したのです.
営業利益率に関しては記載がありませんでしたが,今後は縮小していく市場の中でいかに効率的な経営を行っていくかに焦点が移っています.
また,業務用複合機における富士ゼロックスの市場シェアは36%で第一位となっています(下記サイト).
ソリューションサービス事業
ドキュメントを中心としたシステムインテグレーションやアウトソーシングを取り扱っています.正直,この説明を聞いただけでピンと来る人は中々いないと思いますが,ドキュメントのデジタル化や印刷物(たとえば企業パンフレット等)の企画・デザインから配送までのトータルソリューションの提供を行っています.「印刷機を売る」だけから脱却し,その周辺の課題まで解決を行うトータルソリューション型の事業と認識してよいと思います.
ソリューションサービス事業の売上高推移は以下のようになっています.
売上高は増加傾向にあります.日本の多くのメーカーで行われている事業形態ではありますが,物品を提供するだけではなく,その周辺のサービスまで行うことで,単なる価格競争に巻き込まれない強い付加価値を生み出すことを目的としています.その戦略が功を奏し,売上高は増加傾向にありますね.
ドキュメント周辺サービスはデジタル化に伴ってその運用・管理・保守の需要が高まることは間違いなく,この事業が今後の収益の柱となっていくことは間違いありません.おそらく営業利益率も20%程度あるのではないでしょうか.
なお,富士ゼロックスはこういった事業を指す「マネージドプリントサービス」分野において,
日本市場:58.5%(第一位)
世界市場:32.3%(第一位)
のシェアを誇っています.ソリューションサービスのリーディングカンパニーと言えます.
プロダクションサービス事業
商業印刷機及びその周辺サービスを取り扱っています.プロダクションサービスの売上高推移は以下のようになっています.
売上高は減少傾向にあります.
まず商業印刷の分野は,書籍・雑誌等の印刷を行う出版印刷,パンフレットやカタログ等の印刷を行うマーケティング印刷,製品のラベル・パッケージを印刷するパッケージ印刷の3種類に大別されます.
このうち,出版印刷はイメージできる通りデジタル化に伴ってその市場規模は縮小していく見込みですが,マーケティング印刷・パッケージ印刷は主に製品開発スパンの高回転化,新興国の成長に支えられ,市場規模が拡大していく見込みです.結果として,商業印刷全体の市場規模は拡大傾向にあります.(こちらのページを見ればよく分かります)
よって,この分野は富士ゼロックスやキャノンなど従来の事務機器メーカーにとっては,成長が見込める分野であり,積極的な進出を行っています.もともとの印刷業界とも戦う必要があるので容易ではありませんが.
近年であれば,国内パッケージ印刷大手の共進ペイパー&パッケージと協業して海外進出することを発表しています.
富士ゼロックスの強み
- 業務用複合機における市場シェアは36%で第一位
- MPS市場において,市場シェア1位
日本市場:58.5%(第一位)
世界市場:32.3%(第一位)
- 複合機からの脱却率が高い
上記と関連しますが,プロダクションサービス(商業印刷),ソリューションサービスを合わせると4割程度に上り,キャノンやリコーと比較すると複合機への依存が低いです.
富士ゼロックスの弱み
- 複合機依存度が依然として高い
いくらソリューション率を高めたからといって,いまだ6割程度が複合機事業です.今後の市場規模縮小に合わせた売上減は避けられないでしょう
- 1万人の人員削減
企業としては大事ですが,もう少しどうにかできなかったのかという印象です.複合機の需要が縮小していくことなんて10年以上前から予見できたでしょうし,従業員の20%削減は異常です.経営層が無能である可能性が否めない.また,新卒採用にも影響を与えかねないので,今後はどうにか避けていただきたい
富士ゼロックスの今後
中期経営計画から見る今後の施策
- 2019年度売上高26000億円
- 営業利益2300億円(10%)
- M&A投資5000億円
- プロダクションサービスおよびソリューションサービスを成長指定
キーポイント
- プロダクションサービスおよびソリューションサービスを成長指定
複合機ビジネスは縮小産業ですので,それ以外の比率を高めていくことが重要です.特に,パッケージ印刷は市場規模が拡大していく予定ですので,この分野でシェアを高めていくことが必要です.
富士ゼロックスは就職先としてあり?なし?
- 勤務地
事務系→全国各地
技術系→神奈川県海老名,横浜
研究開発・生産拠点が集中していますので,技術系人材にとっては勤務地を神奈川県に限定でき,魅力的だと思います.
- 将来性
将来性は高いとは言えません.複合機の市場規模が縮小していく以上,富士ゼロックスの売上減は避けられません.また,富士ゼロックス自体が経営の多角化を行うことはホールディングス制度を敷いているため厳しいので,複合機+印刷業界及びその周辺サービスしか取り扱えません.よって,富士ゼロックスが生き残るためには,商業印刷でいかに成功するかにかかっています.ただし,商業印刷分野は各事務機器メーカーおよび印刷メーカーが進出している市場であり,非常に競争が激しいものとなっています.富士ゼロックスがその競争を勝ち抜けるかは不透明であり,勝利できなければホールディングスから売却される可能性が高いです.短期的には構造改革によって高い営業利益をあげられるでしょうから,その間にどれだけの布石を打てるかです.かなり荒波の中を進んでいくことになると推測されます.
- 年収
富士フィルムホールディングスの有価証券しか公開されていませんので,正確な値はわかりませんが,
30才で600万程度のようです.
神奈川県で働きたく,パッケージ印刷に興味がある方にはありかと思います.
理系であれば間違いなく神奈川県で働くことが可能な数少ない大企業ですので,勤務地を制限したい方にはありです.また複合機ではなく,パッケージ印刷に興味がある方が言ったほうが,まだ技術革新が残されており,かつ,市場規模が拡大しているので職場として魅力的だと思います.
以上ご参考になれば.
他の企業はこちらから.
www.atoq.tokyo