【JALとANAの違いを徹底比較】強み・弱みや将来性・方針は?【企業分析】

JALとANA

航空業界は就活生にとても人気ですが,JALとANAの違いって何なのか.
把握しておきましょう!
なお,航空事業(国際線,国内線,LCC)に限って述べます.他は詳細からどうぞ.

それぞれの詳細はこちらから.
JAL
ANA

こちらで書いた内容を簡易的にまとめて,各社の比較を行います.
以下を先に読んで,気になった企業のページを見に行くと良いと思います.
グラフは全て両社のアニュアルレポートより引用しています.

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売上高・営業利益

JAL

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ANA

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解説

売上高はANAの方が大きく,営業利益はJALの方が大きいことが分かりますね.元々はJALの方が売上高も高かったのですが,2010年に経営破綻している間にANAが追い抜く形となりました.今では6000億円と大きな差があります.また,一度経営破綻した背景からJALは営業利益重視の経営を心掛けて,営業利益10%を堅持していくことを目標として掲げています.

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国際線

JAL

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ANA

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(2014を100とした値.2017年度5974億円)

解説

2017年度における国際線の規模はJALが4624億円,ANAが5974億円とANAの方が大きいです.元々JALは国際線,ANAは国内線を担当すると国で決められていた時期があり,JALは国際線に強みをもっていましたが,経営破綻したためにANAのほうが優位に立っています.また近年,経営破綻後ということもあって,JALは有償座席利用率の改善に注力し,売上高自体は横ばいとなっています.一方で,ANAは着実に規模を拡大し続けています.
今後,出国日本人数は横ばいであるものの,訪日外国人数は現在3000万人弱,2020年度には4000万人に到達すると見込まれており,国際線は成長の鍵となる分野です.なお,訪日外国人の80%はアジア圏であることを覚えておきましょう.

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国内線

JAL

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ANA

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(2014を100とした値.2017年度は6897億円)

解説

2017年度における国内線の規模はJALが5182億円,ANAが6897億円とANAの方が大きいです.また,両社に共通して国内線のほうが国際線より規模が大きいです.しかし,近年の傾向を見ればわかる通り,国内の航空市場は今後人口減少と訪日客の増加により影響が相殺され,横ばいの成長を続けると考えられています.したがって,国内線においては,今後はいかに効率的な運営を行っていくかに焦点が当てられています.近々,国際線のほうが規模的には大きくなるのは確実です.

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LCC事業

LCCとはLow cost carrierの略で所謂「格安航空会社」を指します.食事や預けて荷物オプションが有料であるなど,無料では最低限のサービスしか行わないことによって低価格な空の旅を提供しています.学生の場合は殆どがこれを利用して海外旅行に行っていると思うので,むしろ馴染み深いかもしれませんね.JALやANAはLCCと対比してFSC(Full service carrier)と呼ばれます.LCC市場が占める割合は今や国内線で9.7%,国際線で18.9%を記録しています(http://www.mlit.go.jp/common/001198780.pdfより).国内のLCCシェアは現在以下のようになっています.JALやANAのLCC事業への取り組みを見ていきましょう.
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JAL

日本のLCC第1位のjetstar japanを運営しています.なお,その出資比率は33.3%で,カンタス航空33.3%,三菱商事16.7%ですので,子会社ではなく持分法適用会社になります.さらに,国内線のLCCに限れば,jetstar japanは52%を占めており圧倒的な強さがあります.
また,中距離LCCを2018年に設立し,2020年から運行する計画は発表されています.

ANA

ANAが運営するLCCはバニラエア(100%子会社)とピーチ(77.9%の連結子会社)になります.なお,2019年にはバニラエアとピーチは統合して一つの会社になる予定ですので,2019年以降はjetstar japanを抜いてLCC市場の首位となります.2017年度のの売上高は875億円で2018年度には1000億円に到達する見込みです.一応,バニラエアとピーチの違いを述べれば,バニラエアは首都圏,ピーチは関西圏を担当していました.
また,ANAも中距離LCCを始めると発表しています.

なお,各社が言う中距離LCCとはこのあたりのことを指す様子.シンガポール,バンコク,ジャカルタなど主要な新興国をメインターゲット
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保有機体

定義は曖昧ですが,座席数が300以上:大型機,200~300:中型機,100~200:小型機,100以下:リージョナル機とされることが多いようです.

JAL

合計231機(ジェットスター含まず.)
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ANA

合計257機(バニラエア,ピーチを含めれば292機)
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解説

運用機は売上高から考えられる通り,ANAのほうが多いですね.構成比に関しては両社でかなり違いがあります.大型+中型機でANAは160機,JALは111機とANAの方がかなり多いですが,小型+リージョナルにおいては,ANAは97機,JALは120機とJALの方が多いです.すなわち,ANAは一度に多く運ぶ戦略をとっており,JALは細かく何度も飛ばす戦略をとっていることが示唆されています.よって,ANAは規模が大きくなりますが,座席利用率が低くなりやすいので効率は落ちます.一方でJALは規模は小さくなりますが,座席利用率が高くなりやすいので効率は高まります.これがダイレクトに営業利益率に直結していると考えられます.

また,リース機で見ればJALは大型機・中型機をほとんどリースしておらず,ANAはある一定の割合でリースしています.世界的にみれば最新機への交換が容易,バランスシートへの影響が少なく投資家に好まれるなどの利点から,ある一定量はリースするような風潮となっています.ANAはこの流れに沿っていますね.一方でJALは,手数料をかけずに営業利益を高く出すことを目的にか,破綻前に大型・中型機を導入したばかりで(現在規模が上昇していないので)リースの必要がないかで,現在はリースをほとんどしていません.

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就航都市

JAL

コードシェア便を含めば343都市
直行便に限れば以下のような38都市に就航しています.JALでしかいけない都市に青線引きます.
ヨーロッパ(ヘルシンキモスクワ,フランクフルト,パリ,ロンドン),東南アジア・インド(デリー,ハノイ,バンコク,ホーチミンシティ,マニラ,クアラルンプール,シンガポール,ジャカルタ),東アジア(釜山,ソウル,大連,北京,天津,上海2つ,広州,香港,台北2つ,高雄),オセアニア(グアム,シドニー,メルボルン),アメリカ(バンクーバー,サンフランシスコ,サンディエゴ,ロサンゼルス,ダラス,シカゴ,ニューヨーク,ボストン),ハワイ(ホノルル,コナ

ANA

コードシェア便を含めば300都市(正式な発表がされていませんので不確かです.経路図より数えました)

直行便に限れば以下のような42都市に就航しています.ANAでしかいけない都市に青線引きます.
ヨーロッパ(デュッセルドルフミュンヘンブリュッセル,フランクフルト,パリ,ロンドン),東南アジア・インド(ムンバイ,デリー,シンガポール,ジャカルタ,マニラ,ホーチミンシティ,バンコク,ヤンゴンプノンペン,ハノイ,クアラルンプール),東アジア(ソウル,大連,北京,瀋陽青島,上海,杭州,広州,成都武漢,香港,厦門,台北),オセアニア(シドニー),アメリカ(バンクーバー,シアトルサンフランシスコサンノゼ,ロサンゼルス,ヒューストン,シカゴ,ワシントンDC,ニューヨーク),ハワイ(ホノルル),メキシコ(メキシコシティ

解説

コードシェアを含めればともに同じような程度で世界各国をカバーできています.弱点とすれば両社ともアフリカ,南米にはあまり飛んでいません.需要がないからだと思われますが.直行便に限ってみれば,ANAは中国が強く,JALはリゾートに強いといった印象ですね.正直そこまで差はないですが,グアムに行けるのはJALだけだというのは驚きました.

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所属するアライアンス

JAL

one world

ANA

star alliance

解説

コードシェア便やマイレージサービスの業務提携を行うために各航空会社はアライアンスを築いています.主要なアライアンスは3つあり,アライアンス別のシェアでみれば,第1位(22.3%):Star Alliance,第2位(19.1%):Sky Team,第3位(16.2%):One Worldとなっています.コードシェア便を原則このアライアンス内ですることになっていますが,他アライアンスとも結んでいる場合もあります.

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強み・弱み

JALの強み

  • 平均10%超の高い営業利益率
  • 高いサービス力

SKYTRAX社が運営する「ワールド・エアライン・アワード」において「ベスト・エコノミークラス・エアラインシート」を2018年に2期連続で取得しています(ANAは7位).これはエコノミークラスの座席の質を表すもので,一般人が重視すると思われる重要ポイント.また,「5スター」も獲得しています.

  • LCCに強み(ジェットスタージャパン)

上記した通り.

JALの弱み

  • 経営破綻によるイメージ悪化
  • LCCを完全自前で行っていない

強みで書いたようにJALはJetstar Japanを共同運営していますが,完全子会社としてLCCを有していません.しっかりノウハウを学べているかが焦点となってきています.

ANAの強み

  • LCCに強み

上記した通り,2019年以降は首位になります.

  • 規模が大きい(日本1位,世界14位)
  • 総合力が高い

SKYTRAX社が運営する「5スター」を6年連続で獲得しています.また,「ワールドベストエアライン」第3位に輝いています.

ANAの弱み

あまり無いような気がします.強いてあげれば以下ですかね.

  • リース機が多い

現在ANAの保有機は206機所有,51機リースです.一方で,JALは205機所有,26機リースです.所有台数は殆ど同じで,リース機だけ差があります(ANAの方が多いのは売上から見て自然です).このリース差は主に中型機と大型機から来ています.正直,リースは最新機への交換が容易,バランスシートへの影響が少なく投資家に好まれる,などの利点があり,顧客面から見れば強みと言ってよいです.しかし,営業利益を出す上では,リースに毎年お金を支払うことになるため,営業利益率が高くなりません.この点に限って言えば弱みかなと.

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将来性

JAL

現在のところ,経営破綻前のような危うさは一切感じられません.経営不安定な時期は脱したとみてよいでしょう.訪日観光客は今後も拡大していく予定なので,現在の経営を維持できれば問題なく将来まで持続可能と考えられます.ただし,営業利益10%超を維持するのは難しいと予想.このためにはJALのサービスに魅力を感じてくれる顧客を増やす必要がありますが,LCCで済ます人が多くなるのは避けられません.結局LCCの営業利益に引っ張られて10%は割ってくるでしょう.

ANA

JALが経営破綻でもたついている間に大差をつけることができたので,日本No.1の座はほぼ維持できるでしょう.戦略的にみてもあまり無理がなく,また弱みもほとんどないので,これからも市場規模の拡大に伴って安定的に成長していくと思われます.ただアジアNo.1を目指すと書いてあるものの,中国の航空会社に勝てる気はしない.

勤務地

基本的にどちらも全国の空港勤務になります.
総合職は羽田空港になる確率が極めて高いです.

年収

JAL

866万円

ANA

761万円

まとめ

いかがだったでしょうか?
おおよそのJALとANAの違いがつかめたかと思います.個人的な意見がかなり入っているので,気になった点は人事やOBOGに質問して,納得できる会社を選びましょう.
なお,参考文献は以下のページ書いてありますので,そちらから参照してください.

より詳しく知りたい企業があればこちらからどうぞ.
JAL
ANA

航空系以外の企業はこちらから.
www.atoq.tokyo

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