【JALの今後と将来性】破綻からどうなった?サービスを究める【企業分析】

日本航空株式会社

経営破綻してからしばらくたちますが,現在はどうなったのでしょうか.

就職先としてありなのかなしなのか見ていきましょう!

JALとは?

創業:1951年
売上高:1兆3832億円
従業員数:33038人(連結)
本社:東京

勤務地

基本的に全国の空港勤務になります.
総合職は羽田空港になる確率が極めて高いです.

事業情報

以下のグラフは特記していない限り「JAL REPORT 2018」より引用しています.

JALの売上高・営業利益推移は以下のようになっています.
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売上高は緩やかな上昇基調にありますね.また,営業利益率は12~13%を安定して推移しています.本当に経営破綻したことがあるのかというレベルで健全な経営状況です.実はANAの営業利益率は8%前後で推移しており,それよりもはるかに良いのです.2010年に経営破綻するまでの業績推移は以下のようになっていました.
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*1
営業赤字に陥ることが多く,安定した経営ができていなかったことが伺えます.これは当時大型旅客機での運行を主として行っており,リーマンショックによる需要減に臨機応変に対応できなかったことが一番大きな原因と考えられています.飛ばせば飛ばすほど赤字が発生するという状況に陥っていました.経営破綻したとはいえ,ここから安定した経営状況まで持ってきたのは努力の賜物ですね.

JALが取り扱っている事業及び売上高比率は以下のようになっています.
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  • 国際旅客事業

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全体の33.5%を占めています.4629億円.ANAは5974億円です.元々はJALは国際線・ANAは国内線を担当すると国で決められており,JALは国際線に強みを持っていましたが,経営破綻のいざこざで抜かされてしまいました.売上高は近年は横ばいとなっていますね.これは経営破綻以後,有償座席利用率の改善を急務としており,まだ規模を追い求めている段階ではないためです.現在ではコードシェア便などの取り組みも相まって,順調に座席利用率を改善できています.
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今後は特に訪日客の旺盛な伸びが期待でき,いかにシェアを獲得していくかで成長度合いが違ってきます.

  • 国内旅客事業

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全体の37.5%を占めています.5182億円(ANAは6897億円).国際旅客事業より現在は規模が大きいです.国内の航空市場は今後人口減少と訪日客の増加により影響が相殺され,横ばいの成長を続けると考えられていますので,あとは如何に効率的な運営を行っていくかに焦点が当てらています.実際に,座席利用率は年々改善されており,経営努力が伺えます.
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  • 貨物・郵便事業

全体の6.7%を占めています.国際貨物,国内貨物ともに横ばい成長です.貨物では軽量物資が運ばれることが多く,特に今後は半導体の莫大な市場拡大が見込まれますので,成長するチャンスは大いにあると思われます.

  • その他事業

全体の22.3%を占めています.株式会社ジャルパックや株式会社ジャルカードが主です.株式会社ジャルパックはJALが運営する旅行会社であり,営業利益は増加傾向にあります.また,株式会社ジャルカードはその名の通りクレジットカードを運営している会社になります.マイルを利用した制度で顧客を獲得し,前年度から4.7%の会員数増加に成功しています.

JALの強み

  • 高い営業利益率

JALは今後も営業利益10%を堅持したうえで成長していく,という方針を掲げており現在まではその目標を達成できています.二度と経営破綻しないという意地が見えます.

  • 高いサービス力

JALは高い営業利益率を目標として経営していますので,価格競争に呑まれない強力な付加価値が必要です.そこでJALはサービス力に強みを有しています.実績としては,SKYTRAX社が運営する「ワールド・エアライン・アワード」において「ベスト・エコノミークラス・エアラインシート」を2018年に2期連続で取得しています(ANAは7位).これはエコノミークラスにおける座席の質を示す賞であり,多くの一般人が重視する点だと思われます.また,有名な「5スター」も獲得しています.
なお,「ベスト・エコノミークラス」では10位,ANAが5位と負けていますので,まだまだ強化していく必要がありそうです.*2
また,定時到着率をランキング化したfightstatsの「asia pacific major airlines」において1位を獲得しています.*3

  • LCCに強み(ジェットスタージャパン)

JALが運営しているLCCはJetstar Japanになります.(ANAはバニラエア(100%子会社)とピーチ(77.9%の連結子会社)).運営しているといってもJALの出資比率は33.3%で,カンタス航空33.3%,三菱商事16.7%ですので,子会社ではなく持分法適用会社になります.LCCの占めるシェアは今や国内線で9.7%,国際線で18.9%を記録しています.*4
その成長率も著しく,もはやローコストだからといって無視できる規模ではなくなってきました.そんな国内線+日本発着国際線合計LCCにおいて,Jetstar Japanは最大シェアを誇ります.(ピーチとバニラエアを合算した場合,ANAが一位となりますが)
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*5
また,国内線においては52%を占めており,LCCに圧倒的な強みを有しています.

JALの弱み

  • 経営破綻によるイメージ悪化

経営破綻から時間がたったとはいえ,まだまだ記憶に残っている人も多いのが実情です.どっちか言ったらANAでしょ,のような雰囲気が経営破綻によってもたらされています.すぐに解決することはできませんが,このまま長期的に高い営業利益率を上げ,重大インシデントも起こすことなく経営できれば自ずと回復すると思われます.

  • LCCを完全自前で行っていない

強みで書いたようにJALはJetstar Japanを共同運営していますが,完全子会社としてLCCを有していません.LCCが興隆してきた頃にJALは経営破綻してしまったため,自前で設立する余裕がなかったのだと思われます.では,完全子会社として設立していない場合に何が問題か?特に国際線においてはジェットスター自体が統括を行っており,JALはLCCの運営方法やノウハウを獲得しきれていない可能性があることです.ANAは完全子会社で行っており,その運営方法やノウハウを痛みを伴いながら獲得していることを考えれば,これは今後市場規模が拡大するLCC市場での出遅れに繋がります.しっかりとノウハウを獲得できていればよいですが・・.

なお,中距離LCCを2018年に設立し,2020年から運行する計画は発表されています.これを上手く運営できるかでしっかりノウハウをため込めていたか判明すると思います.いずれにしてもLCC本格参入という意味では良いニュースです.

JALの今後

今後の施策

  • 2018年に中距離LCC会社を設立・2020年運行を目指す.
  • 世界主要500都市乗り入れ(現在343都市)(コードシェア便含む)
  • 国際線事業を売上高比50%に.
  • 営業利益10%を堅持しつつ,売上高2兆円を目指す.
  • 2018年より機内衛星テレビ導入
  • 2019年より国内線で国内線座席への個人画面と電源導入
  • フィンテック会社設立

などを行っていくようです.

キーポイント

  • 2018年に中距離LCC会社を設立・2020年運行を目指す.

これが今後の成長を担う上で一番重要になってくるでしょう.中距離がどの範囲を指すのか?については言及が成されていませんが,だいたい以下のようにようになると思われます.(ANAも中距離LCCの設立を企画しており,ほぼ同じになると予想)
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*6
よって,シンガポール,バンコク,ジャカルタなど主要な新興国をメインターゲットに据えると考えられます.ジェットスターで培ったノウハウをしっかり活かすことができるかが重要になってきます.2020年夏に運行ということでオリンピックを狙っているとは思いますが,間に合わせることができるのかも焦点ですね.(まぁ間に合わない気がしますが・・)

JALは就職先としてあり?なし?

  • 勤務地

基本的に全国の空港勤務になります.
総合職は羽田空港になる確率が極めて高いです.

  • 将来性

現在のところ,経営破綻前のような危うさは一切感じられません.経営不安定な時期は脱したとみてよいでしょう.訪日観光客は今後も拡大していく予定なので,現在の経営を維持できれば問題なく将来まで持続可能と考えられます.ただし,営業利益10%超を維持するのは難しいと予想.このためにはJALのサービスに魅力を感じてくれる顧客を増やす必要がありますが,LCCで済ます人が多くなるのは避けられません.結局LCCの営業利益に引っ張られて10%は割ってくるでしょう.

  • 年収

866万円.ANAより高いです.

顧客への上質なサービス提供に興味がある方にはありかと思います.
将来性は問題ありませんので,ANAとの二択になる方が多いと思います.一言で違いを言えば,ANAは規模,JALはサービス力です(現在のサービス力は同じかもしれませんが方針として).JALというブランドを高めるために,他の航空会社に先駆けて先進的なサービスを実現したい,という方にお勧めです.

以上ご参考になれば.

他の企業はこちらから.
www.atoq.tokyo

*1:JAL REPORT 2009より

*2:SKYTRAX 「World’s Best Economy Class Airlines2018」より

*3:FLIGHT STATS「9th Annual On-time Performance Service Awards」より

*4:国土交通省 「我が国のLCC旅客数の推移」より

*5:ANA annual report 2017より

*6:ANA annual report 2017より

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