コマツと日立建機
国内の建設機械業界の2強です.
コマツのほうが大きいと認識されている方は多いと思いますが,
実際のところ何が異なるのか見ていきましょう!
こちらで書いた内容を簡易的にまとめて,各社の比較を行います.
以下を先に読んで,気になった企業のページを見に行くと良いと思います.
財務指標
売上高
売上高推移は建設機械業界全体の需要推移と大きく関連していますので,両社とも同様の動きをしています.常にコマツが日立建機の2~3倍の値を取っています.また,両社とも2018年に売上高が大きく増えていますが,これはコマツがジョイグローバル(売上高3000億円規模)を,日立建機がH-EパーツとBradken(売上高1000億円規模)を買収したことに由来します.
なお,建設機械需要の推移は以下のようになっています.
(コマツ 2018年度 決算説明会より)
また,一般建設機械とマイニング機械にセグメント分けした場合のマイニング機械売上高は,両社とも区分が微妙に異なるので一概に比較できませんが,
コマツ:1兆535億円
日立建機:1847億円
となっています.コマツと日立建機の売上高の差異の主要因であることが分かります.
営業利益
営業利益はコマツが日立建機の3倍程度の値を取っています.営業利益率で見た場合も,コマツに軍配が上がります.リーマンショック以降の2011~2017の期間において,日立建機は低利益体質が続いていました.しかし,ここ2,3年は工場の集約化やアフターサービスの拡充,建設機械業界の活況によって高利益率体質へと変貌を遂げました.メーカー平均が5%と言われていますので,両社ともかなり健全な経営をしていると言えます.
純利益
純利益は概ね営業利益と同様の動きをしています.日立建機は工場の集約化や買収などで積極的に投資を行っていましたので,純利益は営業利益と比較して大きく目減りしている印象を受けます.
売上地域構成比
(コマツは建設機械の売上のみで計算し,産業機械は含みません)
売上高の地域別構成比については,最大割合地域がコマツは北米,日立建機は日本と異なっています.また,第2グループで見ても,コマツは日本,中南米,アジアであるのに対して,日立建機は北米,アジア,オセアニアとなっており,それぞれの得意地域に差異があることが分かります.
構成比だけでは実際の実力がわかりにくいので,地域別の売上高を比較してみます.
実際の数値で比較してみると,全ての地域でコマツが優位であることが分かります.接戦となっているのは中国やオセアニア地域です.
製品ラインナップ
日立建機が国内2位の規模を誇っているため想像し辛いかもしれませんが,実は日立建機は主要7建設機械のフルラインナップメーカーではありません.それぞれの製品の取り扱いを見ていきます.
油圧ショベル :コマツ,日立建機
ホイールローダー:コマツ,日立建機
ブルドーザー :コマツ
リジットダンプ :コマツ,日立建機
アーティキュレートダンプ :コマツ
モーターグレーダ:コマツ
クレーン :日立建機
露天掘り用機械 :コマツ,日立建機
坑内掘り用機械 :コマツ
このように主要7建機の中で言えば,ブルドーザー・モーターグレーダーを日立建機は取り扱っていません.一方で,コマツは過去にはクレーンを取り扱っていましたが,技術不足によって撤退を余儀なくされました.
露天掘り,坑内掘りとはマイニング手法のことを指します.露天掘りは地上から逆円錐形に掘り進める工法であり,ダンプ,ショベル,ホイールローダーを主に使用します.一方で,坑内掘りはトンネルを掘り,地中において掘削を行う工法であり,主にコンティニュアスマイナーなどが用いられます.現在,露天掘りと坑内掘りの市場規模は63:37程度とされています.
コマツはジョイグローバル(現コマツマイニングカンパニー)を買収したことによって,キャタピラーに次いで,マイニング機械においてもフルラインナップメーカーとなりました.一方で,日立建機は露天掘りに対しては対応できていますが,坑内掘りのラインナップは部品を除いてありません.
なお,坑内掘りの中でも,鉱物を対象としたハードロック分野と石炭を対象としたソフトロック分野が存在し,コマツが得意とするのはソフトロックのみです.しかし将来的にはハードロック市場が増加する見込みです.
(コマツ 坑内掘り事業の概要 より)
強み・弱み
コマツの強み
- 高い営業利益率と高い海外売上比率
上記しましたが,長年高い営業利益率を維持してきており,企業体質として徹底的なコストカットやダントツ商品を生み出す風土が染みついています.海外売上比率も極めて高いのが特徴的です.
- 国内シェア1位,世界シェア2位
世界シェア1位はキャタピラーであり,その売上高はコマツの倍ほどもありますが,それでもコマツとキャタピラーの2強とまとめるほどコマツ・キャタピラーより下位の建機メーカーとは差があります.今後いかにしてキャタピラーにおいてついていくかが課題となっています.
- 先進ITを組み合わせた先進建設機械
世界で初めて無人トラックを運行,ハイブリッドを生産,作業機全自動制御など建機業界に次々と先進ITの技術を持ち込み,建機業界をリードしています.ドローンを用いて進捗管理を行うスマートコンストラクションの導入も国内で5500件を超えました.
- 車両製品すべてを自社生産している
車両のコンポーネント全てを自社生産しており,これが実現できているのはコマツとキャタピラのみです.コンポーネントを全て自社生産にすることで,設計の柔軟性が広がり,コンセプトに適した車両を作製することを可能としています.
- ジョイグローバル社買収による露天掘りと坑内掘りの両方が可能となった
上記したので詳細は省きます.
コマツの弱み
- 坑内掘り,特にハードロックが苦手
上記で可能になったといいつつも,まだ可能になりはじめた段階であり,坑内掘りとしての企業からの認知度は高くありません.これからいかにプレゼンスを高めていくかが重要になってくると思われます.また,ジョイグローバルは石炭の坑内掘りに特化した会社であり,鉱物の坑内掘りに関して成長するためにはまだ長い時間がかかる見込みです.
- 北米のシェアをキャタピラに取られている
北米のシェアでキャタピラに勝つためのビジョンが明確に示せていません.そもそも勝つことを目指していないのかもしれませんが・・
- 先進IT・電装関連開発が重荷.
コマツは電気会社ではないので,近年の先進ITや電装開発が重荷になっていることは間違いありません.日立建機は日立製作所が開発した技術をスピンオフして最先端の技術を使用可能であることを考えれば,今は先見の明があり良いものの,これからの自動化の波に耐えていけるかは不透明です.まぁ先進ITは自社開発にこだわらず,様々なベンチャー企業の技術を取り入れたほうが良いものができそうが気がしなくもありませんが・・
日立建機の強み
- クローラー式油圧ショベルの世界シェアNo.1
油圧ショベルは建設機械のうち,最も市場規模が大きく,この分野でシェアが1位を取れていることは競争力があることを示しています.
- 日立グループ
日立グループの一員であることから,日立製作所が有する最先端の技術,特に電装・情報技術を用いることが可能です.コマツやキャタピラーがこの分野の専業ではなく,外部から購入せざるを得ないことを考えれば,非常に大きなアドバンテージです.
- 高い営業利益率
ここ2年は営業利益率が10%以上を達成しており,好調です.
- 工場の一地域集中による生産能力の高さ
茨城県に日立建機の工場のほとんどが集約しており,生産性が非常に高くなっています.
日立建機の弱み
- キーコンポーネントを自社製造していない
エンジン等を自社製造しておらず,自動車会社等に開発・製造を委託していると言われています.
- ラインナップが狭い
上記したので省きます.
- マイニング事業の遅れ
露天掘りに対してはショベル,ダンプ,ホイールローダーを提供できていますが,坑内掘りに対してはノータッチです.今後は坑内掘りの需要が増加してくると予想されているので,一刻も早い対応が必要です.
- 売却騒動
日立グループから売却されると報道されています.時期がいつになるか,また真偽のほども定かではありませんが,この報道が出た以上しばらくは社内・新卒に対して悪影響を与えることは間違いないでしょう.特に採用活動では日立グループというネームバリューと安定性があったからこそ就活生を引き付けられていた面も大きく,以前よりも苦戦を強いられることになります.
個人的意見を述べれば,ドル箱でかつIoTとのシナジーが良い日立建機を売却するとは思えません.
将来性
コマツ
鉱山需要や建機需要は今後新興国の発展に伴ってますます増加する見込みであり,建機産業自体は成長産業です.その中でシェア2位を誇り,先進技術においては世界トップを走っているコマツは安定した成長が見込めると思われます.たとえ世界不況になったとしても赤字にならなかった実績は非常に強みです.潰れることや財務体質が悪化することはまずない.個人的には日本のメーカーの中でも将来性は高いほうだと思っています.
日立建機
日立建機の将来性は高いと言えます.建機最大の市場規模を誇る油圧ショベルにおいて,強力な地位を築いており,またアフターサービス方面へ徐々に事業を拡大しています.かつてのような低営業利益率体質をほぼ脱したと言ってよく,当分は心配ないでしょう.一方で,中長期的に見た場合,コマツ・キャタピラーの2社に対抗していくためには,ラインナップの拡充が不可欠です.中型以下の油圧ショベルは確実に中国企業が幅を利かせてくることは間違いないので,コマツ・キャタピラーと異なり,ブランド力が小さい日立建機は安値競争に飲み込まれる可能性が高いです.よって,フルラインナップとし,ソリューション提供が可能な形態を築くことが重要です.ブルドーザーと坑内掘りを行っている企業を買収することが一番手っ取り早いと思います.
年収
有価証券報告書によれば
コマツ:738万円
日立建機:642万円
コマツのほうが100万程度高いですね.
勤務地
コマツ
部門別で募集しており,この形式であれば初配属地域が限定されます.
・データサイエンス→東京本社
・情報・制御・電気・研究→平塚(湘南工場or万田地区)
・動力伝達装置→石川・大阪・栃木
・油圧機器→栃木・福島
・ディーゼルエンジン→栃木
・生産技術開発→大阪
・産業機械→石川
それ以外の職種(生産技術や車体設計,事務系など)は上記した全国各地の工場のいずれかになります.
日立建機
技術系→茨城県
事務系→営業は全国支店,間接部門は主に茨城県の各工場
まとめ
いかがだったでしょうか?
おおよそのコマツと日立建機の違いがつかめたかと思います.個人的な意見がかなり入っているので,気になった点は人事やOBOGに質問して,納得できる会社を選びましょう.
より詳しく知りたい企業があればこちらからどうぞ.
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“日立建機”
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