株式会社明治
チョコレートや牛乳・ヨーグルトなどで有名な大手食品メーカー
就職先としてありなのかなしなのか見ていきましょう!
明治とは?
創業:1917年
売上高:1兆736億円
従業員数:10,673人
本社:東京
勤務地
3つの募集職種が存在し,それぞれで勤務地が異なります.
技術系→全国各地の工場.なお,研究開発は東京八王子の研究所.
事務・営業系→全国各地
酪農系→北海道が主
事業情報
以下のグラフは特記していない限り「統合報告書 2018」より引用しています.
(エクセルは資料に基づき作製したオリジナルです.)
なお,明治グループの食品セグメントのみを抽出し,明治としています.
明治の売上高は以下のようになっています.
売上高は増加傾向にあります.これはヨーグルト,チョコレート,栄養食品(ザパス)の売上が好調に推移したためです.一方で,牛乳やその他製菓は売上が伸び悩んでいます.明治の選択と集中の経営手腕が功を奏している結果と言えます.
また,海外売上も順調に伸ばしていますが,その海外売上高比率は4.0%と非常に小さい値となっています.
続いて,営業利益は以下のようになっています.
営業利益および営業利益率は増加傾向にあります.これは展開している全ての事業群において利益率の改善が進んでいるためです.具体的には,ヨーグルトの販売量の増加,チョコレートの高価格帯商品のブランド浸透,海外展開が投資段階を脱しつつあることが大きな理由として挙げられます.
また,売上高構成比率は次のようになっています.
発酵デイリー(ヨーグルト,牛乳など)が40%と最大セグメントになっており,加工食品,菓子,栄養セグメントが続きます.
以降ではそれぞれのセグメントについて詳述します.
なおデータはデータブックより引用しています.
各セグメント詳細
発酵デイリーセグメント
明治の主力セグメントであり,ヨーグルト,牛乳,飲料等を取り扱っています.主要ブランドとしては,「明治ブルガリアヨーグルト」「明治おいしい牛乳」「明治プロビオヨーグルトR-1」「ミニッツメイド」「ネスレコーヒー」等が存在します.
発酵デイリーセグメントの売上高・営業利益率は以下のようになっています.
売上高・営業利益率ともに増加傾向にあります.これは主に健康志向の高まりから機能性ヨーグルト(プロビオR-1)が非常によく売れているためです.
近年成長し続けているヨーグルト市場において,明治は圧倒的な存在感を示しており,ヨーグルト市場シェアは43.5%(No.1)に上ります.
ヨーグルト市場は今後も成長が期待できる分野であり,明治の成長ドライバーです.
一方で,牛乳は市場規模が縮小し続けています.
これは高齢化に伴って消化しづらい牛乳が敬遠されたこと,食の多様化に伴って牛乳を選択する人が少なくなってきていることが理由として挙げられます.しかし,魅力的な市場であることには変わりなく,明治の牛乳市場シェアは23.4%(No.1)に上ります.
加工食品セグメント
加工食品セグメントでは,チーズ,バター・マーガリン,アイスクリーム,冷凍食品等を取り扱っています.主要ブランドとしては,「十勝カマンベール」「バター風味ソフト」「スーパーカップ」「ピッツァ&ピッツァ」等が存在しています.
加工食品セグメントの売上高・営業利益率は以下のようになっています.
売上高は減少傾向,営業利益率は増加傾向にあります.細かくセグメント分けして報告されているわけではないので,しっかりとした数字で示すことはできませんが,チーズ・アイスが成長している一方で,冷凍食品やマーガリンがマイナス成長を続けており,結果として売上高は減少しています.
チーズ・アイスは第2の柱として成長させていく方針を掲げていますが,現状としてのシェアは
ナチュラルチーズ:7.1%
プロセスチーズ:11.1%
アイスクリーム:9.6%
となり,決して高いとは言えません.チーズのシェアは雪印が19%でトップシェア,アイスクリームはロッテやグリコがトップシェアとなっています.確かに明治のアイスはスーパーカップしか主力製品がないので,新規製品を投入しない限りシェア向上は難しそうです.
なお,チーズは健康志向及び食の多様化,インスタ映えによって,アイスは温暖化の影響によって市場規模が拡大し続けている市場です.
一方で,マーガリンは雪印にシェアを奪われ,冷凍食品は競合他社にシェアを奪われ続ける結果となっています.特に冷凍食品は市場規模が拡大しているので,この分野を成長産業としない方針を掲げたことは驚きがあります.競合他社が多すぎる冷凍食品を避け,その他の分野に開発リソースを割いていく方針のようです.
菓子セグメント
菓子セグメントはチョコレートやグミ,ガム等を取り扱っています.主要ブランドとしては,「明治 ミルクチョコレート」「明治 THEチョコレート」「きのこの山」「アポロ」「poifull」「XYLISH」等があります.
明治 THEチョコレートは最近高価格帯・おしゃれチョコレートとしてニュースで取り上げられることが多いですね.
菓子セグメントの売上高・営業利益率推移は以下のようになっています.
売上高は横ばい,営業利益率は増加傾向にあります.売上高はチョコレートが新製品の投入もあって好調に推移している一方で,ガムが市場規模自体が小さくなっている(2004年:1800億円→2017年:1000億円)ため売り上げが減少しており,相殺されてほぼ横ばいとなっています.営業利益率はチョコレートの原料であるカカオ豆の価格推移に影響を大きく受けています.近年はカカオ豆の値段が減少傾向にあるので,営業利益率が改善しています.
チョコレートは市場規模が拡大し続けている有望市場であり,明治は市場シェア24.3%(No.1)を誇っており,グミも27.3%(No.1)です.一方で,ガムが5%未満となっています.今後はチョコレートに注力し,さらなるシェア向上を目指していくようです.
栄養セグメント
栄養セグメントではスポーツ栄養や粉ミルク,流動食等を取り扱っています.主要ブランドとしては,「ザパス(プロテイン)」等があります.
栄養セグメントの売上高・営業利益率推移は以下のようになっています.
売上高は横ばい,営業利益率は増加傾向にあります.ザパスが非常に好調であり,またプロテインの中でも高い部類に属することから,非常に高い営業利益率をたたき出しています.売上高はその他の様々な分野で落ち込むため,結果として横ばいを維持しています.
プロテインはシェア53.9%(No.1)となっています.日本人は外国に比べて運動習慣が少なく,プロテインを飲む習慣がありませんが,近年健康意識の高まりからプロテインの需要も高まりつつあります.今後の成長分野においてこれだけのシェアを握っていることは驚異的です.ただし,海外輸入分などはカウントされていないと思うので,実際のシェアはもう少し小さいと思われます.
その他セグメント
その他セグメントは海外事業や飼料,畜産品を取り扱っています.その売上高・営業利益率推移は以下のようになっています.
売上高・営業利益率ともに増加傾向にあります.明治は近年ようやく海外進出を果たし,順調に海外売上を高めています.とは言ってもその絶対量は非常に少なく,2014年290億円→2018年434億円となった程度であり,海外売上比率は4%にとどまっています.
明治の強み・弱み
明治の強み
- 牛乳・ヨーグルト・チョコレート・プロテインにおける圧倒的なシェア
牛乳:23.4% ヨーグルト:43.5% チョコレート:24.3%,プロテイン:53.9%を占めており,すべてトップシェアです.今後の市場としては,牛乳は衰退していくものの,ヨーグルト及びチョコレートは一定期間成長していく見込みですので,有望な市場を押さえていることになります.
- 中国における牛乳事業の投資段階の終了
2013年にスタートした中国での牛乳・ヨーグルト事業が2018年に黒字化することに成功した.今まで粉ミルクの分野で撤退するなど紆余曲折があったものの,結果として中国における事業を軌道に乗せつつあることは評価できます.
- 菓子・栄養セグメントの高い営業利益率
近年,この2分野において高価格商品の拡充などによって急速に業績を改善し,高い営業利益率を確保することができるようになりました.この分野で安定して稼ぐことによって,コア事業である発酵デイリーに安定投資ができると言えます.
明治の弱み
- 海外売上高比率が小さい
海外売上高比率は4%程度と非常に小さい値を取っており,今後確実に縮小が見込まれる国内市場への依存度が非常に高いです.早急な海外進出が必要不可欠でしょう.
- 国内牛乳事業の赤字
実は明治の国内牛乳事業は赤字が続いています.その赤字幅は数十億円と言われており,発酵デイリーセグメントの利益を逼迫しています.その理由としては,牛乳は加工数が少ないので差別化し辛い,とされています.明治はおいしい牛乳ブランドへの1本化,900mL容器の開発など高付加商品の開発を進めています.20年度での黒字化を目指しています.
- 成長事業と位置付けているチーズ・フローズンデザートにおける戦略の乏しさ.
チーズ・フローズンデザートは今後も市場規模が拡大すると見込まれる有望な市場でありますが,明治はこの中で地位を確立するための戦略を「新規商品の開発」としています.しかし,フローズンデザートでは積極的に新しい商品を開発している様子はなく,人気がそこまで高くないスーパーカップの派生商品ばかりで攻めあぐねている印象を受けます.
明治の今後
中期経営計画から見る今後の施策
中期経営計画では次のようなことが述べられています.
- 2026年度に海外売上比率10%
- コア事業として,ヨーグルト,チョコレート,栄養食品を設定し,積極的な資源投下
- 成長事業として,チーズ,フローズンデザート,業務用商品を設定し,将来的なトップシェアを狙う
- 改革事業として,牛乳,調理食品,グループ会社を設定し,収益改善を行う
- 海外は20年度までは中国を最重点地域と設定
キーポイント
- 海外は20年度までは中国を最重点地域と設定
日本の市場は人口減少に伴って衰退していくので,海外での地位確立は差し迫った必須課題です.中国でどれだけシェアを拡大していけるかが今後の明治の未来を左右するでしょう.
なお,現在の海外売上の地域別売上は
中国:119億円
東南アジア:38億円
アメリカ:186億円
です.
明治は就職先としてあり?なし?
- 勤務地
3つの募集職種が存在し,それぞれで勤務地が異なります.
技術系→全国各地の工場.なお,研究開発は東京八王子の研究所.
事務・営業系→全国各地
酪農系→北海道が主
- 将来性
短期的な将来性:大
長期的な将来性:中
5年程度の短期的には国内市場のヨーグルト・チョコレート市場の活性化に伴って売上を伸ばしていくと思われ,将来性が高いと思われます.一方で,それ以降の長期的な目線では,海外進出が成功するかどうかは未知数な部分が多く,これからの頑張り次第といったところです.過去に中国市場の粉ミルクで撤退した経緯があり,また,中国市場では外資系乳業メーカーがしのぎを削っているので,シェアが思った以上に上がらず失敗する未来も十分に考えられます.ただし,国内では圧倒的な地位を築いているので,存続自体は問題ありません.
- 年収
有価証券報告書ではホールディングスしか公開されていません.ただ,
30才で600-700万,
30半ば-40で昇格できれば1000万
ぐらいな雰囲気です.
乳業に興味があり,国内を重視して働いていきたい方にはありかと思います.
海外売上比率は低いので,海外で活躍できる機会は少ないです.ただし,30以降において,自分の手で海外売上を上げてやる!みたいなチャレンジ精神がある方にも向いていると思います.
以上ご参考になれば.
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