三菱重工業
最近良くないニュースが多い三菱重工業ですがその実態はどうなのでしょうか.
就職先としてありなのかなしなのか見ていきましょう!
三菱重工業とは?
創業:1884年
売上高:3兆8757億円
従業員数:80652人(連結)
本社:東京
勤務地
事業ごとに勤務地が決まっています.なお,事業ごとに複数の勤務地がある場合があるので注意してください.
航空宇宙→名古屋
造船→長崎・神戸・横浜
特殊兵器→長崎
火力→神戸・高砂
プラント→横浜
などが基本のようですね.
事業情報
以下のグラフは特記していない限り「アニュアルレポート 2018」より引用しています.
三菱重工業の売上高・営業利益の推移は以下のようになっています.
売上高は2013年以前は3兆円を前後していましたが,2014年に4兆円を突破し,その後は4兆円前後で推移しています.これは事業環境が良かったというより,大手企業との合弁会社設立によって売上高が増加したためです.例えば,日立の火力発電部門の吸収により4000億円,シーメンスとの製鉄企業設立により500億円の売上高増を達成しています.よって,営業に伴う売上高自体はほぼ横ばいといえます.海外売上比率も53%前後と横ばいとなっています.
営業利益は同様なことが言えますね.また近年はMRJへの開発投資が進んでいる+MRJが一切利益を出していない(営業活動をしていないので),現状は利益が出にくい体質にはなっています.よって,現状は営業利益率が4.2%ですが,将来的には7%程度には回復すると予想されています.
三菱重工業は以下のような事業を取り扱っており,その売上比率は次のようになっています.
- パワードメイン
火力発電システム,コンプレッサ,航空エンジン,原子力,再生可能エネルギー,船用機械を取り扱っています.見て分かるように,火力発電システムが75%以上とほとんどを占めています.実は三菱重工全体で見ても火力発電システムの売上高が最大であり,中核事業と位置付けられています.
パワードメインは利益率が7.8%と高く(メーカーの平均営業利益率は5%),ここで稼いだ利益でMRJを回しているといっても良い状況です.今後も世の中の電化に伴ってますます火力発電システムの需要は高まる見通しで,中長期的に見れば確実に成長していくドメインとなっています.ただし,最近は再生可能エネルギーに押されて需要減に悩まされています.
- インダストリー&社会基盤ドメイン
物流機器,ターボチャージャ,エンジン,冷熱,化学プラントなど非常に多岐にわたる事業から構成されています.物流機器が20%超と少し割合が高いですが,基本的には多くの事業に分散されており,一つの事業の影響を受けにくい安定したドメインです.しかし,営業利益率は3.9%と低く,今後の改善が必要となっています.一番有望なのはやはり物流機器で,eコマースの発展により市場規模の拡大が期待されています.業界の中でも3位に位置しています.また,交通システム事業は今後も安定した収益となりそうです.
- 航空・宇宙・防衛ドメイン
MRJ,航空機部品製造,ロケット,防衛機器から構成されています.民間航空機としてはボーイングの主翼などを開発していますが,ドメイン全体としては国からの注文がほとんどを占めています.今後はMRJの導入に伴って徐々に国のプレゼンスが下がってくると思われます.
就職する際の注意
三菱重工は分社化を徹底的に実行しており,三菱重工本体に残っているのは宇宙・防衛のみとなっています.分社化は親会社にとっては機動力の強化や経営の合理化が図れ,いざというときに売却できるメリットがあり良いとされていますが,分社された会社や社員にとってはたまったものではありません.事業が一つに限られるため,経営安定性が非常に悪くなり,待遇や福利厚生も会社ごとに異なってきています.
防衛・宇宙が切り離されることはないでしょうが,他部門に行く場合はしっかりとその子会社の将来性を吟味してください.
MHPSや三菱航空機は中核事業なので,待遇なども一緒のままです.
他はOBOGに聞き出すのが良いでしょう.
三菱重工業の強み
- 火力発電システム事業
三菱と日立の火力発電部門が合併してできたMHPS(三菱日立パワーシステムズ)ですが,中核事業と位置付けられているだけあって安定した営業利益をたたきだしています.また,ガスタービンでは世界シェア1位を獲得しています.
しかし,最近では再生可能エネルギーの普及に伴って,大型ガスタービンの需要が減少しており,top2のGEやSEIMENSはリストラを行っています.三菱重工もついにリストラに乗り出し,今後いつ需要が回復していくるか不透明であり,注視していく必要があります.
- 防衛産業でシェア1位
三菱重工業は防衛産業でシェア25%を占めています.ゼロ戦を開発した過去もあり,防衛産業に絶対的な強みを持っています.海外売上比率がなかなか上がらないのはここや宇宙事業の割合が大きいからでしょう.不況に陥ったとしても,防衛・宇宙は事業規模を大幅に減らされることは技術継承の観点から考えにくいので,非常に安定した屋台骨として機能しています.
- MRJ
これは強みというより企業としての魅力ですが,日本で唯一旅客機の製造に乗り出しています.納入時期が延期延期となってはいるものの,頑張ってもらいたいところです.今後20年で航空機需要は倍増すると見込まれており,そこに介入することができれば新たな稼ぎ頭に成り得るかもしれません.
- ターボチャージャーのシェア25%
ターボチャージャーの業績が非常に良いです.EVに押され,将来的には売上高は頭打ちになってしまうと考えられていますが,2030年までは増加する見込みです.ターボチャージャー業界は4社の寡占であり,三菱重工業はシェア25%を占めています.売上高にすれば2000億円規模になっています
三菱重工業の弱み
- 世界シェア1位の商品がほとんどない
上記でガスタービンが世界シェア1位を取ったと言いましたが,今まではGEやシーメンスにシェアを牛耳られており,どうにもならない状況が続いていました.防衛産業も日本では強いものの,世界に対しては殆ど輸出できていない状況です.技術力とサービス力を駆使して何とかシェアを大きく拡大していく必要があるでしょう.
- 不祥事が多い
最近不祥事の多さが気になります.
大型客船事業2500億円超の損失
MRJ延期5回目
日立製作所との火力発電の巨額損失の押し付け合い
火力発電事業でのリストラ
今まで技術力の高さを謳ってきましたがその実態が危ぶまれています.
三菱重工業の今後
今後の施策
- MRJへの追加投資
- AI/IoTへの取り組み
- 物流機器の進化
- 航空機製造の無人化対応
などを行っていくようですね.
キーポイント
- AI/IoTへの取り組み
今後カギになってくるのはやはりここになってくるでしょう.三菱重工業もITソリューション本部を立ち上げ,工場の自動化やビックデータ解析による新たな価値の創造に力を入れだしました.もともと火力発電事業では様々な機器を計測しておく必要があり,そこで培ったデータを大量に保有しています.これまで培ってきたデータからヘルスモニタリングや故障診断ができれば,他の企業にない価値を提供できるようになっていくのではないでしょうか.
三菱重工業は就職先としてあり?なし?
- 勤務地
航空宇宙→名古屋
造船→長崎・神戸・横浜
特殊兵器→長崎
火力→神戸・高砂
プラント→横浜
などが基本です.事業ごとに調べましょう.
- 将来性
今後5~10年は火力発電事業の不況に伴って,横ばいの成長をしていきます.その後は,MRJ導入によって究極の赤字部門がなくなり,営業利益的にはかなり健全に戻っていくと思われます.ただし,売上高に関しては火力発電事業の市場次第であり,このまま再生可能エネルギーシフトが進んでいけば,売上高を伸ばしていくことは難しくなってくるでしょう.
防衛・宇宙は一生安泰.MHPSは市場次第で危うい.三菱航空機はMRJが初導入されてからの評判次第.三菱ロジはずっと成長していく見込み.ターボは10年後からが危ない.
- 年収
845万.800万超ですが,分社化によって本社比率が高まっているため年々平均年収が高まっています.実際は大手メーカーと同水準です.
- その他
2019年卒でMRJ部署に配属される予定で採用される人はいなかったようです.全員それ以外の航空・宇宙になったそうです.MRJの設計に携わりたい方は自分が入る年の運次第になりますね.
火力発電事業に興味があるor航空・宇宙・防衛に興味がある方にはありかと思います.
このあたりの産業では国内トップですので,とりあえず三菱重工業にするのが良いでしょう.
ですが,他の事業に携わりたい方はわざわざ三菱重工業を選択する意味はないように感じます.(分社化で三菱重工業という安定性もなくなってしまったので)
以上ご参考になれば.
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