【森永乳業の今後と将来性】就職先としてあり?なし?【企業分析】

森永乳業株式会社

その名の通り乳業を主力とする大手食品メーカー

就職先としてありなのかなしなのか見ていきましょう!

森永乳業とは?

創業:1917年
売上高:4405億円
従業員数:3144人
本社:東京都港区

勤務地

3つの職種で募集されています.
研究開発→研究所(神奈川県)
生産技術→全国各地
酪農コース→北海道が主
生産技術に限っては地域職が用意されています.事務系は全国各地.

事業情報

以下のグラフは特記していない限り「アニュアルレポート 2018」より引用しています.
(エクセルは資料に基づき作製したオリジナルです.)

森永乳業の売上高・営業利益推移は以下のようになっています.
f:id:k-true:20190407223037p:plain
f:id:k-true:20190407223052p:plain
かなりスパンを長くとりましたが,ここ15年程度は売上高が横ばいの状態が続いています.これは国際事業や健康・栄養事業が増加しているのに対して,BtoC事業の売上が減少していることに加え,不採算事業からの撤退を積極的に進めているためです.
一方で,不採算事業から撤退したことによって,営業利益は大局的にみれば改善傾向にあります.ただし,食品メーカーの中でも営業利益率は低調に推移しており,より抜本的な改革が求められていることに変わりはありません.

また,純利益推移は以下のようになっています.
f:id:k-true:20190407223125p:plain
純利益はほぼ営業利益と同様の動きをしていますね.2008年前後はリーマンショックの影響による事業再編の影響で大幅に利幅が縮小しています.一応最高益を達成しています.

森永乳業は以下のような事業セクションを展開しています.
f:id:k-true:20190408214952p:plain
BtoC事業が過半を占めていること,海外売上比率が4%程度と低調であることがわかります.

森永乳業は以下のような事業を行っています.なお,セグメント区分が2016年で変更されたので,これ以降のデータによって比較を行います.

BtoB事業

別名,機能性・食品素材事業であり,クリーム等の乳原料商品やビフィズス菌,ラクトフェリン,乳素材などの機能性素材を取り扱っています.BtoB事業ですのでイメージし辛いかと思いますが,森永乳業は高い菌体製造技術を有しており,ビフィズス菌等の菌類や多機能たんぱく質などを企業向けに販売しています.

BtoB事業の売上高・営業利益率推移は以下のようになっています.
f:id:k-true:20190407223220p:plain
売上高・営業利益率ともに横ばいとなっています.ただし,近年は健康意識の高まりから高機能材料への関心が高まっており,今後は成長が期待される分野となっています.

国際事業

海外での事業を取り扱っています.主に粉ミルク等の乳原料製品を取り扱っています.

国際事業の売上高・営業利益率推移は以下のようになっています.
f:id:k-true:20190407223243p:plain
売上高は増加傾向にありますが,営業利益率は投資段階のため赤字黒字を繰り返しています.これはドイツに乳原料を生産する新工場を2017年に稼働,パキスタンに2019年から稼働する粉ミルク生産工場を新設したことなど,積極的な投資が続いているためです.

国際事業の売上高比率は4%しかなく,森永乳業が国内偏重の企業であることがわかります.

基本的に商品ラインナップとしては粉ミルク・ヨーグルトであり,この2分野においてどれだけの市場を確保できるかがかかっています.重点地域としては,ヨーロッパ・米国・東南アジアが挙げられています.

なお,パキスタンでのシェアは25%程度もあります.

健康・栄養事業

育児用粉ミルク等の栄養食品,サプリメント,流動食等を取り扱っています.主要ブランドとしては「はぐくみ」「クリミール」「やさいジュレ」等が存在しています.

健康・栄養事業の売上高・営業利益率推移は以下のようになっています.
f:id:k-true:20190407223257p:plain
売上高は増加傾向,営業利益率は高い水準で横ばいとなっています.これは近年の健康に対する意識の高まりや高齢者に対する介護用流動食の売上が好調に推移していることに由来します.

詳細な数字は近年公開されていませんが,流動食のシェアはトップであり,30%程度です.

BtoC事業

様々な飲料・乳製品を展開しています.主要ブランドとしては,「おいしい牛乳」「まきばの空」(牛乳),「Mt.RAINIER」(カフェラテ),「ビビダス」(ヨーグルト),「PINO」「MOW」「PARM」(アイス),「焼プリン」など誰もが知る商品を展開しています.

BtoC事業の売上高・営業利益率推移は以下のようになっています.
f:id:k-true:20190407223320p:plain
売上高は減少傾向,営業利益率は増加傾向にあります.これは不人気商品の撤退および主力製品への集中が積極的に進められてきた結果と言えます.逆に言えば,シェアを徐々に他社に奪われてきています.

各市場シェアは次のようになっています.
チルドカップタイプコーヒー:44%(第1位)
チルド紅茶:67%(第1位)
ヨーグルト:10%(第3位)
チルドデザート:19%(第1位)
アイスクリーム:12%(第4位)
チーズ:12%(第3位)
チルドタイプ飲料などにおいて圧倒的なシェアを誇っています.しかし,近年は好調・不調の商品がはっきりと分かれています.下記は各商品ごとの売上高推移です.
f:id:k-true:20190408230410p:plain
チルドカップ飲料・チルド紅茶・牛乳・デザートの分野が減少傾向
アイスクリーム・チーズが増加傾向
となっています.アイスクリームとチーズだけでは全体としての減少傾向に歯止めをかけることができていない状況ですので,新飲料の投入など新しい戦略が求められています.チルドカップ飲料の大幅な減少に関しては,近年はドトールやスターバックスなどがチルドカップ飲料に参入してきていますので,その影響で徐々にシェアが低下していることが原因と推測されます.

なお,牛乳自体は市場規模自体が急激に減少していますので仕方がない一面があります.一方でヨーグルトは市場規模が拡大しているにも関わらず横ばいとなっていますので,ヨーグルトにおいても的確な対応が必要でしょう.

森永乳業の強み

  • 多商品における圧倒的な市場シェア

上記したように,市場シェアが非常に高い値を取っています.すなわち,世間における高いブランド力を有しており,安定した経営基盤を有しています.

  • ビフィズス菌に関する高い技術力

ビフィズス菌のパイオニアとしての地位を確立しています.

森永乳業の弱み

  • 売上高が横ばい・低い営業利益率

牛乳の市場規模の縮小や,チルドカップ飲料等で市場シェアを奪われているために,BtoC事業の売上が減少しており,全体として成長できていません.また,工場の閉鎖などにより効率化が徐々に図られてきたものの,まだ食品メーカーとしては低い営業利益率水準にあります.
正直ここまで伸ばすことが出来ていないとなると,経営陣が有能ではないと言わざるを得ない.

  • BtoC事業が過半を占める点

BtoC事業が主力事業であるということは,日本の人口減少の影響を顕著に受けます.今後の市場規模縮小によって売上高が減少していくのは不可避でしょう.

  • 海外売上比率が低い

海外売上比率は4%となっており,非常に低い水準となっています.ドイツミライ社やパキスタンの新工場など積極的に投資を行っていますが,新たな柱となるまでにはまだ時間がかかるでしょう.

森永乳業の今後

中期経営計画から見る今後の施策

  • 2020年3月に6400億円(おそらく無理)
  • 2020年に国際事業400億円
  • 2019年6月にパキスタン工場稼働
  • 機能性ヨーグルト(「トリプルアタックヨーグルト」)の拡充
  • チーズにおけるシェア向上

キーポイント

  • 2020年に国際事業400億円

人口減少が進む日本を主戦場としている森永乳業にとっては,国際事業の拡大は急務です.国内においてはまだヨーグルトやアイスの市場が拡大しているため,急激に売上が減少していくわけではありませんが,あと5年程度で国内向けBtoC事業の全商品の市場規模が頭打ちor減少に向かいます.そのため,持続的な成長を遂げることが可能かどうかは,国際事業にかかっています.

森永乳業は就職先としてあり?なし?

  • 勤務地

3つの職種で募集されています.
研究開発→研究所(神奈川県)
生産技術→全国各地
酪農コース→北海道が主
生産技術に限っては地域職が用意されています.事務系は全国各地.

  • 将来性

持続性という意味での将来性は高いと言えます.これだけの市場シェア及び高いブランド力を有しているので,急激な売上減少があるわけではありません.一方で,成長性という意味での将来性は低いです.正直,個人的には海外事業が国内事業の縮小に拮抗できるほど成功できるとは思えないので,売上はあと5年程度をピークに減少に向かいます.よって,利益率を重視した経営に転換していくと思われます.

  • 年収

741万円
30才で500~600万円.そこからの伸びはあまり良くないようです.

食品メーカー希望で,乳業を中心とし,特に日本市場を重視したい方にはありかと思います.比率として非常に低いので海外向けで活躍したいという方にはお勧めできません.また,日本の人口動態と同様の動きをしていくので,今後会社の規模が小さくなっていくことを容認できることが大切です.

以上ご参考になれば.

他の企業はこちらから.
www.atoq.tokyo

Copied title and URL