【サッポロの今後と将来性】ビールに強み&恵比寿を有する不動産が屋台骨【企業分析】

サッポロホールディングス株式会社

3大総合飲料メーカー(アサヒ,サントリー,キリン)に比べると格落ち感がありますが,商品としては根強いファンを有してるサッポロ

就職先としてありなのかなしなのか見ていきましょう!

サッポロとは?

創業:1949年
売上高:5515億円
従業員数:7902人(連結)
本社:東京

勤務地

基本的に全国各地になります.

事業情報

以下のグラフは特記していない限り「統合報告書 2017」より引用しています.
(エクセルは資料に基づき作製したオリジナルです.)

サッポロの売上高・営業利益推移は以下のようになっています.
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売上高は増加傾向にあります.リーマンショック前後で大きく売り上げを落としていますが,景気が回復するにつれて売上も復調しています.特に近年の成長は国際事業が牽引しています.
一方で,営業利益はほぼ横ばいとなっています.営業利益率は3.5%前後で安定してはいるものの,他の総合飲料メーカーと比較した場合,営業利益率の低さが目立ちます.特に食品事業や国際事業の営業利益が足を引っ張っています.国際事業は投資段階であるため仕方ないと言えますが,食品事業に関しては抜本的な改革が必要でしょう.また,不動産事業は非常に高い営業利益率をたたき出しています.

サッポロは以下のような事業を取り扱っており,その売上構成比は次のようになっています.
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国内酒類事業

国内の酒類事業を取り扱っています.「サッポロビール株式会社」等がこれにあたります.具体的には,「サッポロ黒ラベル」「YEBISU」「麦とホップ」「こくいも」などを主要ブランドとしています.

酒類業界全体についての詳細については下記を参照してください.
https://www.atoq.tokyo/entry/drink-kongo
概説すれば,国内における酒類販売は減少傾向にあり,内訳としてはビール,発泡酒,新ジャンルが減少,RTDのみ増加となっています.したがって,市場の将来性自体は良いとは言えません.また,新たな動向として酒税法が改正され,ビール,発泡酒,新ジャンルの税率が2026年に統一されます.結果として現状との比較でビール→減税,発泡酒・新ジャンル→増税となり,酒類販売業者は利益率の高いビール回帰を見込んでいます.

国内酒類事業の売上高と営業利益率は以下のようになっています.
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売上高・営業利益率ともに横ばいとなっています.サッポロ黒ラベルが3年連続で売上を続伸し,ビールは好調が続いていますが,発泡酒・新ジャンルで大きく売上を落としており,結果的に横ばいとなっています.「極ZERO」(発泡酒),「麦とホップ」(新ジャンル)などがこれにあたりますが,確かに他社製品に比べて存在感が薄いのは否めませんよね.一応,ワインや和酒,RTDの売上は増えてはいますが,微増でしかありません.

カテゴリー別の売上構成比は以下のようになっています.
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ビール類が75%以上となっており,かなり偏った分布をしています.近年の成長が著しいRTDがたったの4%しかないのは戦略ミスといってよいでしょう.RTDカテゴリに存在するのは「男梅サワー」「キレートレモンサワー」などがありますが,他社製品に比べてこれらを好んで選んでいる人はいない印象を受けます.RTDカテゴリの売上推移は以下のようになっています.
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(単位:億円)
他社と比較した場合,一桁落ちの水準でしか売れていません.今後の課題と言えるでしょう.

国際事業

サッポロホールディングスの国際事業(酒類)を取り扱っています.「サッポロインターナショナル株式会社」等がこれにあたります.基本的に「SAPPORO」ブランドとして販売されています.

国際事業の売上高・営業利益率推移は以下のようになっています.
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売上は増加傾向にありますね.一方で,営業利益率は低下傾向にあります.これは投資段階にあることを指しています.サッポロはカナダやアメリカで強みを有していましたが,さらにその地位を向上させるべく更なる投資を行っており,2017年にアンカーブリューイングカンパニーを買収しました.売上高は37億円と大きくないですが,カリフォルニア州に強みを有しており,また,創業が100年を超える伝統のブランド力が持ち味の企業です.この買収によって,アメリカの販売網強化を狙っているようです.

海外売上エリア別構成比は以下のようになっています.
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(国際事業に飲料事業は含まれていません.)
北米がかなりの割合を占めていることが分かりますね.実際に,カナダ市場で第3位,アメリカのアジア系ビールNo.1のシェアを占めています.東南アジア(ベトナム・シンガポール)にも重点的に投資を行っており,今後の成長が最も期待できる事業となっています.

食品・飲料事業

食品や清涼飲料水を取り扱っています.「ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社」等がこれにあたります.具体的には,「ポッカレモン」「じっくりコトコトコーンポタージュ」などを主要ブランドとしています.

食品・飲料事業の売上高・営業利益率推移は以下のようになっています.
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売上高はほぼ横ばいとなっています.また,営業利益率は非常に低い水準で推移しています.売上に対してほとんど利益を上げることができていません.これは体質的な問題でしょうから,これからの経営改善が求められています.

基本的にレモン系列,コーン系列に強みを有していますが,それ以外では目立つ商品が多くありません.他の商品を切り捨て,レモン,コーンに集中投資したほうが経営的には良いと思われます.

外食事業

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外食産業を取り扱っています.「株式会社サッポロライオン」等がこれにあたります.エビスバーなどが有名でしょうか.売上・営業利益率ともに横ばいで安定していますが,そこまで重視して行われている事業ではありません.ブランド力強化のために付随的に行われています.

不動産事業

不動産事業を取り扱っています.「サッポロ不動産開発株式会社」等がこれにあたります.「恵比寿ガーデンプレイス」「札幌ファクトリー」「銀座プレイス」などを展開しています.

実は恵比寿の街はもともとエビスビールを製造する工場があったため,恵比寿という名が付けられました.それが時代が経て,現在では住みたい街ランキング上位となる程の魅力ある都市になっていますね.こういった背景があるため,サッポロは恵比寿周辺に多くの不動産を有しています.その筆頭が「恵比寿ガーデンプレイス」ですね.

不動産事業の売上高・営業利益率は以下のようになっています.
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売上高はそこまで高くないですが,驚異の営業利益率46%を誇っています.サッポロの今年度の営業利益170億円のうち,112億円を不動産事業が稼ぎ出しており,隠れた大黒柱となっています.

サッポロの強み

  • サッポロ黒ラベル・エビスのブランド力

サッポロ黒ラベルはここ3年連続で売上続伸,エビスは維持しており,縮小が進むビール市場で強力なブランド力を発揮しています.固定ファンがいるのは事業の安定性に繋がります.発泡酒・新ジャンルがあまり売れていないので,酒税一本化によるビール重視路線をとる可能性がたかいですね.

  • 北米のビール事業に強み

カナダ市場で第3位,アメリカのアジア系ビールNo.1のシェアを有しています.

  • ポッカレモンが強い

100%レモン果汁調味料のシェアが84.3%となっており,ほぼ独占状態です.

  • 不動産事業の高利益率体質

恵比寿の街を作り上げ,かなりの高利益率をたたき出しています.今後も他の事業の成長を支える屋台骨として活躍してくれるでしょう.

サッポロの弱み

  • RTDカテゴリの弱さ

RTDカテゴリが他社製品に対して全く売れていない.新ブランドの投入など抜本的な改革が求められています.「男梅サワー」「キレートレモンサワー」が存在感ありませんよね.

  • 海外売上比率が小さい

海外売上比率は21.2%しかありません.他の総合飲料メーカーと比較して海外進出が遅れています.

  • 飲料・食品事業の営業利益率の低さ

いつ赤字に転落してもおかしくないほど営業利益率が低水準です.レモン・スープ以外にもう一つの柱があればもう少しは安定すると思われますが,いずれにしても事業の選択と集中が必要です.

サッポロの今後

中期経営計画から見る今後の施策

国内酒類事業

  • ワイン事業をビールに次ぐ第2の柱へ
  • RTD事業の強化

海外事業

  • 北米とベトナムに注力

飲料・食品事業

  • レモン事業強化
  • スープ系事業の強化
  • 投入ヨーグルトにも投資

キーポイント

  • RTD事業の強化

RTD事業が市場の成長に対して全く追い付いていません.これはまだまだ成長の余地があるということでもあるので,今後の盛り返しが重要となっています.

サッポロは就職先としてあり?なし?

  • 勤務地

基本的に全国各地になります.

  • 将来性

存続という意味での将来性は高いでしょうが,成長性という意味の成長性はあまり高くないです.国内酒類事業は,今後も発泡酒の売上が減少し,ビールの成長分を打ち消します.ワイン事業を第二の柱にするとうたっていますが,日本のワイン市場は競合が多く,また売上規模もそこまで高くないので期待はできません.市場唯一成長しているRTDも男梅サワーという商品を強く押し出している時点で,本気で勝ちに行っているとは思えません.結局ビール頼みの経営となり,国内ビール市場が縮小していくなかで同様の動きをしていくと思われます.
国際事業は期待ができます.食品・飲料事業は選択と集中を行って規模は落としていくと思われますので,大きな成長はできないでしょう.外食産業が大きく伸びることはない.不動産事業は安定的な収益基盤となりますが,長くとも2025年まででそれ以降はほぼ成長できないでしょう.
結論を言えば,将来性はあまり高いものではありません.

  • 年収

ホールディングスなので有価証券をみても分かりません.
聞いた話ではサッポロビールで,30歳で500~600万程度なので競合他社に比べると低い水準となっています.

  • その他

住宅補助が8割出るので,給料が低い分はカバー可能.

サッポロブランドが好きな方or北米市場に興味がある方にはありかと思います.
よっぽどサッポロブランドが好きでない限り,年収が低いのでお勧めできません.3大総合飲料メーカーを第一希望として,サッポロは第二希望にするのが良いでしょう.ただし,北米市場に興味がある場合はここを第一にしてもよいかと思います.

以上ご参考になれば.

他の企業はこちらから.
www.atoq.tokyo

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